この後目茶苦茶怒鳴られた
•オチなし短文
メルニキが失敗する話
海の上に浮かぶブリッグの帆船。生きてる人間をあらかた斬ってぼんやりしているとショコラがのんびりと血溜まりを避けながら近づいてきた。
彼女の頭を撫でながら私はとうとう限界を迎えた。
「クロに会いたい」
原因は本当に些細な事だったがクロにとってはそうではなかった。
「その面……とうぶん見せるな」
怪我が完治してから吐き捨てるように言われた言葉には怒りが滲み出ていて反論は許されなかった。するつもりも無かったが。
謝罪はできても返事がされる事は結局無く私は反省を伝える為には言われた通りに会わない事以外できない。
「良い機会だ兄弟離れさせろ」
と呆れた様子でカイドウさんに言われた事もあり私は頑張って実行した。
手紙も電伝虫も使わずに仕事とお菓子巡りと海賊船とたまに天竜人の船を沈めることに没頭し一年二年、会いたくなっても我慢して三年四年。
そして五年目……もう限界だった。めちゃくちゃクロに会いたい。仕事であった事とか死を覚悟するほど強かった海賊とか海軍と交戦した話とか美味しかったお菓子の話とか聞かせたい話が沢山ある。三年前からショコラは何度もクロの滞在してるアラバスタに行きたがるのも限界さを加速させた様に思う。ふと航路をそちらに向けていて慌てて変えたことも一度や二度の話ではなかった。
本当なら十年くらいは我慢してクロに改めて謝りつつ会う機会を減らそうと思ったのに。
無理!会いたい!元気な顔みたい!
「言われたことも守れないのは最低では」
落とした言葉にショコラが少し怒ったように一声鳴くとアラバスタの方角に腕を噛まれて引っ張られる。事情を話しても何故かショコラだけは今でも納得していない様子だった。
反省してるなら兄弟だろうと誠意を示さなければいけないし兄なら尚更だという気持ちでとりあえずお土産を持参してアラバスタへ向かおうかショコラも会いたがってるし……。
「もしかして永遠に弟離れできないのかな私」
船の行き先をエターナルポースが指し示す方角に合わせて死体を海に還しつつ落としたため息にショコラは呆れた顔をするだけだった。